日本伝統漆芸展が始まっております。
初日の10日には、研究会、授賞式、懇親会があり、人間国宝の先生方をはじめとし諸先輩方や同世代の漆芸家が全国より集まりました。
今回奨励賞を賜わり講評もいただき、今まで以上に身の引き締まる思いがいたしました。
自分がこれから漆芸家として工芸という大きなくくりの中でどのようにして歩んでいくのか改めて自問すべき時なのかなと感じました。
今回の作品は黒揚羽をモチーフとしました。
庭木に幼虫がよくつくのでずっと観察していましたが、もっとも感動したのは実は羽化の瞬間ではなく蛹になる前でした。
終齢の幼虫の食欲はすさまじく、葉っぱを入れても入れてもすぐになくなりました。
その後、じっと静かになり大丈夫かな?と思っていた矢先に大量のフンと水分を出し、変態後には必要のない内臓も捨て、空っぽの透明な体で安全な場所を必死に探していました。
そしてようやく落ち着いた所に蛹を作り、その後沈黙を貫いていました。
そこで感じたのは、変化するのはなんと苦しそうに見えるかということでした。
おそらくクロアゲハに迷いなどはなく、ただただ蝶になって次へ繋げるプログラムをこなしているだけなのだと思いますが、きっと変化には沢山のものを吸収し、そこからいらないものを捨て、じっくりと練る時間が必要であるのだという事を教えてくれました。
表現という点ではどこまでできたのか…というのが正直なところですが、また今後もじっくりと向き合っていきたいモチーフでありました。
どうぞご高覧いただけましたら幸いです。
1月23日まで。